2004-01-01から1年間の記事一覧

それらしきモノとの出逢い

ブクリョウの子実体らしきものに出逢ったのは、2003年7月20日でしたよ。 千代田区の北の丸公園の一角でしたよ。クロマツの切株に類白色、全背着性のべったりキノコが拡がりましたよ。不思議に思ったのは、切株のまわりの地面にまで子実体が拡がっていること…

ブクリョウの子実体

小川真著『きのこの自然史』(築地書館,ISBN:4806721980)p. 153 には、ブクリョウ Wolfiporia cocos (Schwein) Ryvarden & Gilb. についての以下のような記述がありますよ。 ぶくりょうを探すにはまず、マツの切り株を見る。切り株の樹皮の下を見て、くさ…

Richard P. Korf 1959. Japanese Discomycete Notes Ⅸ-ⅩⅥ. Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo, 45:389-400.

前回は多数の種類を報告した Chlorociboria 属ですが、本稿では Chlorosplenium のシノニムとしてあつかっていますよ。 ほかにも多数の盤菌を報告しています。 □Chlorosplenium aeruginosum (Oeder ex Gray) DeNot. □Chlorosplenium aeruginascens (Nyl.) Ka…

Richard P. Korf 1958. Japanese Discomycete Notes Ⅰ-Ⅷ. Sci. Rept. Yokohama Nat. Univ. Sect. Ⅱ., 7:7-35.

多雨で多湿で南北に長い日本。 とうぜん菌類もいっぱい棲んでいて。 多様性に富み、固有種も多い、ということで、かの「チャレンジャー号」の昔から菌学的調査がおこなわれていたそうですよ。 Korf博士が日本を"未開の楽園(unexplored paradise)"とよんだと…

蕈は汝を腐らさん

白人 白人 いづくへ行くや こゝより奥は 暗の森 藪は汝の足をとり 蕈は汝を腐らさん ちがひなしちがひなし 藪は汝の足をとり 蕈は汝を腐らさん 文語詩『スタンレー探検隊に対する二人のコンゴー土人の演説』 この詩から容易に想起され、中央アフリカに分布し…

Tsuguo Hongo and Eiji Nagasawa 1980. Notes on some boltei from Tottori Ⅴ. Rept. Tottori Mycol. Inst., 18:133-141.

第5報では3種が報告されましたよ。 ヌメリコウジタケは『原色日本菌類図鑑』などで Pulveroboletus cramesinus があてられてきましたが、ここで Aureoboletus にうつされています。 ■ヌメリコウジタケ Aureoboletus thibetanus (Pat.) Gongo et Nagasawa □ミ…

Tsuguo Hongo and Eiji Nagasawa 1978. Notes on some boltei from Tottori Ⅳ. Rept. Tottori Mycol. Inst., 16:50-58.

第1報でシワチャヤマイグチにあてられた菌名 Leccinum subglabripes (Peck) Singer が、今回報告された別のイグチにつかわれていますよ。 シワチャヤマイグチは Leccinum hortonii (Smith & Thiers) Hongo & Nagasawa としてあつかわれています。以下の4種を…

Tsuguo Hongo and Eiji Nagasawa 1977. Notes on some boltei from Tottori Ⅲ. Rept. Tottori Mycol. Inst., 15:50-54.

3種のイグチが報告されていますよ。 クロヤマイグチは日本新産ですよ。 □ツブエノウラベニイグチ Boletus granulopunctatus Hongo □クロヤマイグチ Leccinum nigrescens (Rich. & Roze) Singer □ヒビワレニガイグチ Tylopilus areolatus Hongo

Tsuguo Hongo and Eiji Nagasawa 1976. Notes on some boltei from Tottori Ⅱ. Rept. Tottori Mycol. Inst., 14:85-89.

第2報では2種を報告していますよ。 1新種、1新組み合わせを含みます。 ■クラヤミイグチ Boletus fuscopunctatus Hongo et Nagasawa, sp. nov. ■ホオベニシロアシイグチ Tylopilus valens (Corner) Hongo et Nagasawa, comb. nov.

Tsuguo Hongo and Eiji Nagasawa 1975. Notes on some boltei from Tottori. Rept. Tottori Mycol. Inst., 12:31-40.

数種の鳥取産イグチについて。 本稿では1978年に鳥取県内で採集されたイグチ5種が、うち1種は日本新産として報告されていますよ。 その5種を採録しますよ。 □ニセアシベニイグチ Boletus pseudocalopus Hongo □ナガエノウラベニイグチ Boletus quercinus Hon…

椿木生人手

〔見聞雜記〕御勘定吉川榮佐衛門支配所、上州山田郡の内、龍舞村名主隱居庭に、文化二年五月十日比、圖ノ如く椿木に人手生ず。其色白く、六七才位の小兒の手の如く、厚さ手程にて爪は鳥の樣子少し有之、虫の巣か、又は朽木に出來候茸のやうにも見ヘ候よし、…

牧野富太郎の「カナメゾツネ」

以前拙サイトにて、アミガサタケの一方言「カナメゾツネ」について、以下にリンクした記事のような発言をしましたよ。 ようするに、語源がわからんと。http://www3.sppd.ne.jp/kin/salon.cgi?type=display&num=4082114652その後もしつこく調べていたら、牧野…

菜花爲蓮花

〔花史左編〕巻七 〔菜花〕熈寧中。李及之潤州に知らる。園中に菜花盛開す。悉く蓮花と成る、各花中に一仏座あり。形彫刻の如し。其の數計り莫し。曝乾して其の像依然。 西暦千五百六十八年 〔酉陽雜俎〕〔蔓青爲蓮〕務州僧、清簡家が園、蔓青*1忽ち變じて蓮…

Hisahiko Furukawa 1974. Taxonomic Studies of the Genus Odontia and its Allied Genera in Japan. Bull. Gov. For. Exp. Sta., 261:1-87 & Plate 1-12.

コメバタケ属 Odontia と、その近縁とされるものを解説していますよ。 この属をハリタケ科におくか、コウヤクタケ科におくかということは大きな問題でしたが、ここでは Odontia がしっかりとした軸をもつ真正の針を形成することから、ハリタケ科におかれたよ…

Yasuo Hayashi 1974. Studies on the Peniophora Cke. and its Allied Genera in Japan. Bull. Gov. For. Exp. Sta. 260:1-98 & Plate1-4.

カワタケ属 Peniophora のことについてあれこれ書いてありましたよ。 もともと Peniophora Cke. はタイプ種が指定されておらず、「Corticiumのうち、シスチジアを有するもの」とされていたそうですよ。 本稿冒頭の研究史のところには、Bourdotの7グループに…

W. Julich 1974. The genera of the Hyphodermoideae. Persoonia, 8(1):59-97.

コウヤクタケ科の1亜科であるHyphodermoideaeについて、担子器の特徴などをもとに整理していますよ。Permasto(1968)の"Conspectus Systematis Corticiacearum"によってしめされたHyphodermoideaeの概念は決して明瞭なものではなく、含まれる諸属どうしの線引…

1974年コウヤクタケの資料

コウヤクタケ。地味な菌纏だけど、よくみればものすごく多様性に富んでいることがわかりますよ。 観察はルーペでも十分おもしろいですよ。 今回は、1974年に発表された3つの論文から採録しますよ。

Coleosporium xanthoxyli Dietel et P. Sydow によるクロマツの葉さび病

カラスザンショウのサビキン。秋期の都内では、わりと普通に見ることができますよ。本稿はこの菌の同定のためにコピーを取り寄せたもので、全世代の生活史があきらかにされています。 すなわち本菌の精子器・銹胞子世代はクロマツに、夏胞子・冬胞子世代はカ…

小林義雄 1951. 菌誌(3) 日本産タマバリタケについて. 植研雑, 28(10)311-316.

タマバリタケ属 Physalacria 。google:Physalacriaわりと見つけにくく、見つけたとしてもよくわからないので捨ておかれる菌群で、じつはそんなに珍しいモノではないような気がしますよ。私のタマバリタケとの出会いは、2年前の6月、高尾に虫草を捜しにいった…

隠密行動

もうこんなことはまっぴらなので、警備の方々の仕事をふやさないように、スマートに。 隠れながら、あるいは懐柔しながらの隠密行動が、私のフィールドワークの現実となっておりますよ。菌捜しをしていれば不審者あつかいされるのは当然のことで、テロリスト…

不審者あつかい

私の菌採集のフィールドは東京のまんなかで、環境庁の警備員さんとか皇宮警察の方とかがうろうろしてますよ。 日によっては私服のおまわりさんがいたりしますよ。 夜に小枝を拾いにいったりすれば、機動隊っぽいフルフェイスメットの方にでくわしますよ。周…

出版者の権利

購読料や会費でなりたっている学術雑誌や会報などの場合を考えてみますよ。 コンテンツは投稿という形で発表されるわけで、著作者(論文を書いた人)に印税が入るわけではありませんよ。 ひろく世の中に流布されることこそが実績にむすびつき、著作者の利益…

菌の情報に関する権利

著作権やその隣接権とインターネットの兼ね合いで、いろいろと問題がおこってきているらしいのですが、私も真剣にかんがえるとよくわからなくなることがありますよ。たとえば《図書館からどんどん資料を取り寄せよう!》などととwebで発言すること。違法では…

民俗学と謎学

ところで白井と熊楠の間には民俗学の柳田國男という人がいて、影響を与えあっていたようですよ。 白井に『植物妖異考』を出すようにすすめたのも、熊楠を学術誌以外の世界に引っ張ってきたのも柳田ですよ。『植物妖異考』でも、いくつか民俗学文献からの引用…

良質な謎学

「近代謎学(なぞがく)の名著」と私が勝手に位置付けているのが、この『植物妖異考』ですよ。何度か復刻版も出たようなのですが、いまいち知名度がないらしいことは、残念だなあと思っていますよ。内容は植物の奇形をあつかったもので、帯化現象や突然変異…

売れるデンジャラス

近年、バイオレンス系・ホラー系映画のヒットとかが話題にのぼるので、こんなことを考えましたよ。人をひきつけるモノやフレーズをつくりたいときは、しばしば"デンジャラス"な要素をミックスしてやるのが効果的!ということですよ。でもリアルデンジャラス…

Tsuguo Hongo 1965. Fungi of Hindukush collected by Mr. Honda. Acta Phytotax. Geobot., 21(3-4):117-118.

邦題:本多勝一氏採集のヒンズークシの菌類4,5年前、いわゆる登山とか登攀の類をしていたことがありますが、やめました。 なんか本多勝一著『山を考える』の言説を真に受けてしまってやめました。今ではいろんな意味で有名な本多氏ですが、いわゆる山記者時…

名前のしらべかた

一般にキノコなどのイキモノを同定するときには、これじゃないかと見当をつけた種類のタイプ標本か原記載にあたるのがのぞましい、とされていますよ。 菌株を分譲してもらうという手もあるらしいですよ。タイプはうしなわれているなり外国にあったりする場合…

今井三子 1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類〔Ⅳ〕. 植物及動物, 3(12):43-48.

昇龍菌屬 Helvella Fr. を検索表付きで解説していますが、シャグマアミガサタケもこの仲間とかんがえられていたようですよ。 以下の8種+8変種を採録しますよ。 □ノボリリュウ Helvella crispa Fr. □ノボリリュウ Helvella crispa Fr. f. fulva Mass. □シロノ…

今井三子 1935. 昇龍菌科の分類とその邦産の種類〔Ⅲ〕. 植物及動物, 3(11):59-64.

網笠茸屬の続きから入り、Fries のGyromytra を認めずにつくった大赭熊茸屬 Neogyromitra Imai と丸實昇龍菌屬 Helvellella Imai 、頭巾被り屬 Verpa Fr. の各論となっています。以下の7種+3変種を採録しておきます。 □オオトガリアミガサタケ Morchella ela…