民俗学と謎学

ところで白井と熊楠の間には民俗学柳田國男という人がいて、影響を与えあっていたようですよ。
白井に『植物妖異考』を出すようにすすめたのも、熊楠を学術誌以外の世界に引っ張ってきたのも柳田ですよ。

『植物妖異考』でも、いくつか民俗学文献からの引用があるし、熊楠にも独自の民俗学がありますよ。

ともあれ、自然科学のベテランが民俗などの人文方面のことを書いたものは、なぜかおもしろいものが多い!

反対に、民俗学の人がイキモノについて言及すると、たまに変なことになるのを目にしてきました。
たとえば、全国各地にある「木から血が出る」という伝説。
id:collybia:20040607で紹介されたように、 Fusarium spp. のしわざと見ていいと思うのですが、民俗学の論文では「人々の自然に対する畏怖の感情が、そのような幻覚を見せたのだろう」となっていますよ[日本民俗学,181:1-41]。
また、ハエトリというキノコについて書いた文章ではなぜか「タマゴテングタケ」「ほしたり漬けたりすれば食べられる」ということになっていたり[民間伝承,264:26-27]。
うーん。深入りが足りない気がしますよ。

『十二支考』にしろ『植物妖異考』にしろ、自身の専門性のタコツボに閉じこもらず、積極的に他分野に深入りしてやるぞ、という二人だったからこそ、こんなにおもしろいのかもしれませんよ。