十五夜さんのキノコ
ハチスタケ。
上記の原先生が発見されたキノコですよ。
兎の糞上から見いだされている菌で、写真のごとく長い柄をもつ子座を形成する変わった糞生菌ですよ。
1915年、原先生による報告が発記録とおもわれますよ。*1
このとき原は故郷の岐阜県川上村に病気療養のため一時帰郷中でしたよ。
どうやらSaccardoやSydowに標本を送っていた時期と一致しているようですよ。
この時点では未知種とはみなさず、「此菌ハ米國に發見セラレタル Poronia leporina E. et Ev. ニ相當スルモノヽ如シ。」と書いていますよ。
また形状が傘釘に似ることから「ヒメカサクギ」の和名を与えていますよ。
日本菌学会会報には晩年の原先生の論文が6編掲載されていますが、うち2編でこの菌について触れています。1958年には線画をおぎなって「ウサギノミミカキタケ」とし*2、1960年にはカメムシタケの異名であるミミカキタケとの混乱を避けるためハチスタケ(蓮茸)と改称します。
また新種と認めて Poronia jugoyasan Hara としましたよ。*3
種形容名の
1976年には六十数年ぶりに本菌が採集され、培養に成功しました。またPodosordariaに移されています。*4
植木鉢ですよ
典型的なKKKの幼菌画像です。
http://d.hatena.ne.jp/hira333/20040727
ファーブル先生の観察
一方、ファーブル先生はキノコにたかるウジの観察をしていましたよ。
そこでAmanita属菌が彼らに嫌われていることを発見しますよ。
しかしここでは、毒菌だけでなく、食菌のセイヨウタマゴタケも嫌がっていることも指摘しますよ。
一筋縄にはいきません。
要するに人間にはうまかろうが猛毒だろうが、蛆はアマニト類なんかお断りと来る。ただこうらなめくじだけが時たまそれをかじる。何でそれを断るのか、その原因は我々には解らない。例えばてんぐたけには幼虫に致命的なアルカロイド*1があるから、と言ってみたところで始まらない。そんなら、毒は何もないたまごたけ*2が、有毒な奴同様、全く嫌われているのはどうだ。と訊ねたくなる。それでは、味がなく、食欲を刺激する調味が欠けているためだろうか。生のまま噛んだのでは、アマニト類には味覚をそそる何もないのは本当だ。
『完訳 ファーブル昆虫記(十)』 山田吉彦・林達夫 訳 p.329
セイヨウタマゴタケの、ハエへの対抗手段はなんなのでしょう?
興味はつきません。
虫とAmanita
宮澤賢治の『おい けとばすな』は、ベニテングタケのうつくしさをうたいあげた口語詩ですよ。
http://why.kenji.ne.jp/haruto3/1053oi.html
先日、この詩の下書き原稿をあさっていたら、こんなおもしろいのがでてきましたよ。
Royall T. Moore 1955. Index to the Helicosporae : Addenda . Mycologia, 49 : 580-587.
5新種を記載し、上に挙げた検索表を補完します。
■Helicosporium pannosum (Berk. & Curt.) Moore, comb. nov.
■Helicosporium Neesii Moore, sp. nov.
■Helicomyces lilliputeus Moore, sp. nov.
■Helicoma acrophalerium Moore, sp. nov.
■Helicoma Isiola Moore, sp. nov.