良質な謎学

近代謎学(なぞがく)の名著」と私が勝手に位置付けているのが、この『植物妖異考』ですよ。

何度か復刻版も出たようなのですが、いまいち知名度がないらしいことは、残念だなあと思っていますよ。

内容は植物の奇形をあつかったもので、帯化現象や突然変異、菌類病の類から、虫えい、笹魚などの線虫病まで網羅されているのですが、古文献や本草文献を引用しながらの注訳スタイルである点に特徴がありますよ。

植物学と本草学、両方に通じていた白井博士ならではの仕事、といえるかもしれません。
もっとも、明治に入って伝統的な本草学は近代植物学への改変を迫られており、博士が両方の知識をもっていたのは当然といえば当然らしいのですが。
そういった激動の移行期だったからこそ、いわゆる「伝説・俗説のウソ/ホント」みたいなことが大マジメに検証されましたよ。
そこには知的冒険があり、謎学と同質の興奮がありますよ。
当時は良質な謎がいっぱい転がってたから、雪男だのネッシーだのといったうさんくさい謎学にはなりませんよ。

同時代を生きた南方熊楠の著作中にも、龍とはなにか、河童とはなにかみたいな考察があるので、UMA関連の方々には是非読んでいただきたいですよ。