J. E. Robbers, L. R. Brady and V. E. Tyler 1964. A Chemical and Chemotaxonomic Evaluation of Inocybe Species. Lloydia 27(3) : 192-202.

アセタケ属 Inocybe (Fr.) Fr. の、種間レベルでの分類は、非常にむずかしいとされているみたいですよ。
どんな特徴を分類の主軸におくかによって体系がガラッと変わってきてしまうようです。
じっさい、それまで提案されてきた分類のやり方の間には、ほとんど共通点がないことがここで指摘され(形態による分類の限界)、含有成分による分類(chemotaxonomy)の適用を試みていますよ。

構成成分はクロマト法(ペーパークロマト)でしらべますよ。
クロマト法による分類や同定は、細菌や地衣類の世界ではごく普通に行われているのに、キノコではあまりやらないのはなんででしょうか奥さん。
めんどくさいんだろうとおもいますが、顕色反応のいらない色素なんかを、ろ紙なんかをつかって簡便な円形クロマトにしてみたりだけでも意外とおもしろいかもしれませんよ。

この報告で展開溶媒としてつかわれたのは、BAcW*1、PhW*2、BPyW*3、BMeW*4などとよばれるモノで、場合によりつかいわけたようです。
展開後の顕色反応には硫酸はつかわず、Nin.*5、PDAB*6、Xanth.*7などという溶液をつかったそうです。

本報ではこれらの実験結果に基づいてInocybe39種の構成成分(ムスカリン、各種アミノ酸など)を明らかにし、属内における位置を決定しましたよ。
さらに、クロマトによる検索表をつくってすっきりとまとめている力作ですよ。

*1:n-ブタノール・アセト酸・水、4:1:1

*2:フェノール・水、4:1

*3:n-ブタノール・ピリジン・水、1:1:1

*4:n-ブタノール・メタノール・水、10:3:2

*5:ニンヒドリン0.5%n-ブタノール溶液

*6:パラジメチルアミノベンズアルデヒド2%ヒドロクロロ酸溶液

*7:キサンチドロル酸溶液10%ヒドロクロロ酸