菜花爲蓮花
〔花史左編〕巻七 〔菜花〕熈寧中。李及之潤州に知らる。園中に菜花盛開す。悉く蓮花と成る、各花中に一仏座あり。形彫刻の如し。其の數計り莫し。曝乾して其の像依然。 西暦千五百六十八年
〔酉陽雜俎〕〔蔓青爲蓮〕務州僧、清簡家が園、蔓青*1忽ち變じて蓮と爲る。
是菜花、即雲薹の葉花病に罹りしものを記述するに他ならず。雲薹、蔓青、蘿蔔等は、白銹菌の寄生を受くる時は、花の諸器變して、多肉質の葉状體を成し、細小なる蓮花に似たる花となるなり。
白銹病菌は、學名を Albugo candida O. Kuntz. と云ふ。病植物は葉面に、胞起せる小白班點を生し、其の花梗の上部は通例肥大拳曲し、其花の諸器は葉状體となり、且肥厚して小蓮花状をなし滿面に白班點を生するに至る。而して此病菌は本邦及歐米各國に普通に見る所にして、近頃三宅市郎氏の研究により、支那に産することも亦明證せられたれば、此記事が、白銹病に關するものなることは、更に疑を容るゝを要せざるなり。
*1:蔓青[マンセイ] カブのことだそうですよ。